麦のおもらし

ドイツで細々と生きるズボラ主婦がもらす、インテリアや収納やなんやかんや

〈辻仁成ブログ「フランスで差別された時の対処法」を読んだ!③〉日韓の軋轢、ドイツでどう伝える? 〜主婦と国益〜

辻仁成氏がミュージシャンとしてオーディションを受けたとき、同時に合格したのが尾崎豊だったのですってね!

 

辻仁成全然関係なくなってる気がしますが、続きです。

omorashilife.hatenablog.com

 

 

〈日韓の軋轢をドイツで説明する・準備編〉

日本の1人である息子が韓国の1人から受けているヘイトについて、学校に分かりやすく、手短に説明しなくてはいけません。

✳︎ヘイト・ヘイトスピーチとは:人種、出身国、民族、宗教、性的指向、性別、容姿、健康といった、自分から主体的に変えることが困難な事柄に基づいて、属する個人または集団に対して攻撃、脅迫、侮辱する発言や言動のこと。ウィキペディアより

 

慰安婦の画像事件も、万年筆事件も、授業中に起こっています(その授業では各自スマホを使用する)。

 

ちょうどすぐ後のタイミングで担任の先生方(1クラスの担任は2人)との保護者面談があったので、そこで話すことにしました。

先生方と話す言葉は、英語です(英語を話してくださる先生ばかりではないので、うちはラッキー☆)。

 

まず、家で夫と作戦会議です。

が、早速が立ちはだかります。

 

夫は慰安婦を表す英単語として、sex slaveを連発します。

麦はちょっと待て、こりゃマズいぞ、と思いました。

夫は日本人だけれど、そういえばアメリカでアメリカの歴史を習いアメリカ的に生きてきた人だった。

こういう時に、日本的麦は思い知ります。

 

先生方には、実際に息子の身に起こっていることをそのまま伝えればいいと思っていましたが、夫との会話を通して1人の平凡な主婦である日本的麦が守らなくてはならない大切なものに気づきました。

 

国益です。

 

ついでに。

麦の愛国心やなんかはとりあえず置いておいても、息子の困り事をドイツで上手く伝えるためには、

あ〜、日韓で昔そんな事があったんじゃあ、言われても仕方なくね?

と相手に思わせてはいけません。

します。

 

慰安婦問題については、日韓での捉え方に大きな隔たりがあります。

麦家は日本人ですので、日本の主張を採用します。

 

というわけで、外務省のHPをチェック。

日本側の主張を再確認し、sex slave ではなくcomfort woman という単語を使用することを脳味噌にインプット🧠。

 

そういぅことを世界に向けてでっかい声で言ってくれてりゃあ、€17の万年筆も壊されなくて済んだのにヨォ💢

悲しいほどミクロ視点のボヤキが出てきます。

 

とにかく、日本の主張、韓国の主張、実際に息子の身に起こったことなどを簡潔にまとめて原稿を作成。

実にめんどくさいです。

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あーー全部平和ならいいのに。今日のデュッセルドルフ

 

原稿を見直し、これではドイツ人にガツンと伝わるパンチが足らんなぁ…と考えました。

 

パンチを足す言葉を慎重に考えつつ、保護者面談の日を迎えました。

 

〈日韓の軋轢をドイツで説明する・実践編〉

こんなややこしい話をしなければいけない日に限って、うちの英語担当(夫)は仕事で面談に行けなかったりします。

 

気が重い。

自分の息子のだらしなさを改めて思い知らされる(麦にとっての保護者面談とはそういう場所です…先生いつもすいませぇん!と言いながら入場するのだ)だけでも憂鬱なのに、英語。慰安婦問題付き。

そもそも、麦はそんなに英語が達者ではないのです。

 

始まる前から脇汗など流しつつ、面談開始。

 

案の定息子のだらしなさを思い知り、今後のことなどを先生方と協議。

脱力しつつも気を取り直してこちらの話題へ。

 

間違えてはならん(国益!)ので、原稿を見ながら話します。

息子の身の安全と国益を守らなければ!と気張って、喉カラカラ。

麦は何事も考えすぎる嫌いがあるのです。

 

慰安婦画像事件の話を、起こったことそのままに伝えます。

 

息子に、そして親にとっても、とても残念な出来事がありました…

 

韓国の1人が、授業中に、スマホに慰安婦の画像を出してデスね、息子に向かって

日本人は韓国人をムリヤリせっくすしたー!

と、言いましタ(麦の英語のカタコト感)

 

先生方はまずキョトンとして、次に驚きの表情になり

 

せっせっせっくす???

 

と、おっしゃいました。

 

麦は、無理もない、保護者面談には相応しくない言葉であることよ、と思いました。

しかし、興味を持っていただけたようです。

 

麦の目的は、韓国の1人に日本の1人(息子)へのヘイトをやめてもらうことです。

ふーんそりゃ大変でしたネ、で終わっちゃあイカンのです。

ここは、自分に責任のないことには心置きなく無関心を貫くドイツなのですから。

それが良い悪いではなく、単純にそういう場所なのですから。

こちらの出方を工夫する必要があります。

 

ここから、

 

日韓の慰安婦問題についてご存知ですか?

 

という話に入ります。当然ご存じないです

そりゃそうです。ドイツのタイ料理屋には寿司があるくらいなのですから。

omorashilife.hatenablog.com

 

 

麦は慎重に慎重を重ねて、できるだけフラットな視点で(できるだけフラットな視点で見てるように見えるように)慰安婦問題について説明をしました。

 

しかし、その説明を理解していただくには、麦の力では

 

例えばアメリカではsex slave と呼ばれたりしている女性の方々…日本ではcomfort womanと言いますケドも(国益)

 

なんて言わなくてはならず、己の無力さにガックリくるのでした。こくえき、守れない!ごめん、日本!!喉カラッカラ!!!

 

先生方(教科ごとに先生が変わる。担任の先生は事件が起こる時にはいらっしゃらない)は

 

えぇ、それが授業中に!?

わお、それはいけないですね。

 

親身になって、息子に心を寄せてくださっている(ラッキーなことに、とても良い先生方なのです)ことが伝わってきます。ありがたい。

でも、やっぱりピンと来ないようです。

琴線に触れた、という手応えがない。

 

孤独な戦い(別に戦いではないのだけれど、そういう気持ち)で疲労困憊、ボロボロの麦が隠していた最後のパンチをお見舞いします。

 

歴史的背景だとか、各国の主張だとか、そういうのは違うのですが…(こ・く・え・きっっ!!!)

日本人の彼(息子)からすると、ドイツ人が他の国の人から

おまえナチ

って言われたような感じです。

 

麦が(おまえ〜のとこだけはドイツ語で)言いますと、先生方はしばし絶句し

 

ダメダメダメダメ、

ソレ絶対ダメ!!!!

 

とまずは憤り、そして呆れ、

 

彼(韓国の1人)の担任とすぐに話します。

もうこんなことは起こらないようにするから。

学校というのは、そういうことを言って良い場所ではありません。

 

とおっしゃいました。

実際、その言葉はすぐに実行されました。

 

彼(韓国の1人)がすぐに変わることはありませんでしたが、息子自身も彼とは距離をとるようにして、新たな事件が起こるのを防いだようです。

ドイツの小学校で散々いじめられた経験が活きました。

 

韓国の1人が歴史問題を絡めながら味方にしようとしていた中国の1人は、結局日本の1人(息子)と良好な友人関係を築いているようです。

 

万年筆は、弁償していただけました。

(親には内緒にして、お小遣いから払ったみたい。)

 

☆上記は、麦が相手との関係性、状況などを考慮して、全て自分で責任を取る覚悟で話した内容ですので、そこのところご承知おきください☆

 

〈負の連鎖〉

今回の事件について息子と話していた時、麦が

 

君(息子)がやられたことは酷かったけど。

韓国人の彼が、日本人に対してはそういう態度で接するのが正しいって教わってきたとしたら…

彼のお父さん、お母さんもそういう風に教育されてきたとしたら…

彼は悪いことをした、ってことになるのかなぁ?

 

という疑問を口にすると、息子は

 

迷惑かかってんだから、悪いに決まってるでしょ。

そんなに日本人のこと悪く言いたいんだったら、韓国で、韓国人同士で言えばいいんだよ。

ココはドイツだヨ💢

 

と、キッパリ言いました。

 

君って時々、本当のこと言うよね。

 

プレイステーションしていい?

 

ダメ。

 

 

 

息子はかなり打たれ強い性質を持っており、かつ慰安婦について少しの知識がありました。

親から聞いていたことだけでなく、愛読の歴史マンガからも、慰安婦についてはハッキリさせずにボヤかしてるなぁ〜ということを感じ取っていたようです。

 

息子はその性質と知識から、突然韓国の子どもに慰安婦問題でからかわれても対処(行動は殴り合いだったけれども、意味を理解し、心の折り合いがついている)する事ができたけれども、全ての日本の子どもがそうだとは限りません。

 

ぼやかされた教育で慰安婦問題を掴みきれないでいる日本の子どももいるでしょう(麦もそういう子どもであり、掴めないまま大人になってしまった)。

 

意味がわかっていても、攻撃されたら深く傷ついてしまう子どもも、きっといるでしょう。

 

他を差別することを、大人が子どもに伝えてしまうのは、負の連鎖です。

知るべきことを知らせないままでいることも、また負の連鎖なんだなぁ。

 

 

麦両親と麦がソウルで道に迷っていたら、韓国人のおじいさんがスッと近づいてきて日本語で道案内をしてくれたときの、ホッとした気持ち。

その後、麦母が麦に、なぜ韓国のおじいさんが日本語を話せたのかを教えてくれたときの、苦い気持ち。

麦はそのとき、まだ子どもだったけれど、今でも鮮やかなままです。

 

 

せめて自分のうちの中からだけでも。と、柔らかくなったキウィを食べながら、麦は思うのでした。🥝