頼んでない
一場面一場面を鮮明に覚えているので、麦はその時すでに、小学校中学年にはなっていたかと思います。
当時、麦は両親と団地に住んでおりました。
五階建て、階段しかない社宅です。
ある日、麦母と麦は出先から、団地の一室である住処に帰って来ました。
まず階段を登らないと住処にはたどり着かないのですが、その階段の登り口のところに、それはそれは立派などデカいトンボが一匹、とまっておりました。
麦母はトンボを見るや否や
シッ!🤫
オニヤンマや
と麦に向かって、鋭く小声で言いました。
そして
取ったる。
妙にきっぱりと、宣言しました。
全然取っていらんのに。
オニヤンマはこちらに背を向けていたので、麦母は麦が止める間もなく、オニヤンマの羽に向かって密やかに素早く指を伸ばしました。
さぁ行くで
と確認するかのように、ちらり、と麦の顔を見る麦母。
大物のオニヤンマ、素手でイケるのか?
次の瞬間
ギャアーーーー
麦母の悲鳴が団地の一棟全体(全30戸)に響き渡りました。
え?え??なに?なに??
麦は戸惑いつつ麦母の手元を見ました。
指からかなり流血している様子です。
オニヤンマがっ、
クルッと振り向いてっ、
噛んだっっ!!
興奮した様子で血のしたたる指を麦に見せる麦母。
見たくない!結構深く噛まれている!!
オニヤンマの顎の力、恐るべし!!!
痛そうに指を押さえながら
やっぱりオニヤンマは難しいな。
と言った麦母。
最初からオニヤンマ、いらんよ。
虫全般が苦手…ピンボケ写真にせめてかわいいフレームをつけてみた