〈息子が生まれた日②〉息子の誕生、夫のことば
〈息子、誕生!〉
前回↓の続き
まくった麦は、分娩室に入りました。
たぶん朝の8時くらいだったのだと思います。
麦母が何を血迷ったか、私が立会いましょか??なんて言って、看護師さんにキッパリ断られています。
始発の新幹線で東京から大阪に向かったはずの夫は、果たして近づいて来ているのでしょうか。
もうこの辺りの記憶はあいまいなのですが、
メールなのか、通話なのか、とにかく夫と麦は連絡を取り合っていたようです。
産科の先生や看護師さんたちが、夫の現在地を麦に尋ねてきます(立会い出産希望としているため)。
いまドコ?フワー(麦が痛みを逃す声)
と夫に聞くと、
始発には乗ってないねん。
会社にパソコン取りに寄っててん。
と言うではありませんか。
………パソコン💢(麦)
あと1時間くらいしたら、着くと思うねんけど〜(夫)
麦は思いました。
もう来なくていい。
そもそも麦は全然、出産に立ち会ってほしくなどなかったのです。
夫が希望していただけだったのです。
先生方に、夫の到着までまだかかりそうデスと伝えると、先生は軽ーい調子で、
そうなんやぁ〜。
じゃあ、待つ??
とおっしゃいました。
はぁ?待つ??そんなん出来るんですか???
できるよー。出さへんかったらええだけやし。
…どうもこの先生、交代の時間らしく、さっきから隙を見ては帰ろうとしています。
逃ーがーすーもーのーかー。
せんせいっ!待たない待たないっ!!大丈夫!!!
あと2、3回で出すから!!!!!
フワー
と先生を諦めさせ、約束を守るべく懸命にひり出します。
ぐぉぉぉぉぉーーーーーー!💢💢💢
出ました!
息子誕生!!
夫は立会いませんでしたが、大学病院での出産のため、医者の卵が男女1名ずつ立ち会ってくれました。
〈夫のことば〉
赤ん坊が産まれた後のなんやかんや(洗ったり、縫ったり、カンガルーケアとか乳飲ますとか)をしてるうちに、
廊下をドタドタドターと走る音が聞こえてきました。
どうやら夫が今さら到着したようです。
夫はごめんごめーん♫ と言いながら分娩室にぴょーんと飛び込んでくると、一直線に息子に向かい、一気にまくし立てました。
かわいいでしゅね〜パパでしゅよ〜💕
あっ!ばぁば(廊下で待つ麦母)に見せてこよ♫
ほやほやの新生児を何のためらいもなくヒョイっと抱き上げ、呆気にとられている麦のことなどお構いなしに息子を抱えて歩き出しました。
そして、何かを思い出したかのように麦の方を振り返り、麦に向かって一言、言いました。
鼻毛出てるで。
くやしい。こんなこともあろうかと、病院に来るタクシーを待ってる間にちゃんと切ったのに。
一生懸命きばったから、一気に伸びたのか…?
そのときの写真(麦母撮影)
分娩室から入院する部屋までヨロヨロと歩き(産まれた後があんなに痛いなんて、聞いてなかったぞ)、自分のベッドにたどり着きました。
たどり着いたらまず、入院セットから手鏡と毛抜きを取り出し、処理しました。
確かに、出ていました。
おまけに、きばり方が下手だったのか目の血管が切れたようで、片目が真っ赤になっていました。
ひどい有様でした。
結局、夫は取りに行ったパソコンを一度も使うことなく、東京に戻りました。
この日から何年も経った頃、この麦の鼻毛の話を、夫が会社でネタにしていることが発覚しました。
本当に失礼なことです。